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Nowhere To Hide 無宿モノの世界中ポートレート

感謝の形









人通りの極端に少ない通りに面した家の主人は、毎日この家の正面にあるバルコニーで何かを期待しながら午後の時間を費やす。見知らぬ人との対面をほとんど期待できない小さな集落で、偶然通りかかった珍しいアジア人の僕を見て少し興味を示したらしい。


たわいもない会話をしたのみだが、アボリジニの人達というのはつくづく、他の人種とは違う性格であることを思い知らされる。まず、驚きや喜びなどの感情をほとんど表情に見せないように思える。慣れないと相手が何を考えているのかわかりずらく、人によっては無愛想に映るかもしれない文化だ。そして自ら近づいてきて何か情報を得ようと質問してきたり、というような興味を見せることが少ない。


一番驚いた文化は、これは部族によっても違うかもしれないが、アイサツをしたり、敬意を表する言葉が無いことだ。すなわち、「やあ、こんにちは」や「ありがとう」という言葉が存在しないとのことだ。これは、彼らが敬意を表しないということを意味しない。元々家族単位の小さな集落で生きてきたので、アイサツをする必要がなかったり、家族同然の相手から食料をもらったり良くしてもらったことに対して、単純に感謝を言葉で表する必要がなかったからだ。それは家族単位で生き残るのに当たり前のことで、相手に何かをしてあげることが当然のことなんだろう。表面的な言葉は言う必要が無いのだろう。僕は世界中の言語はこうした簡潔に自分の意思を表するモノから出来てきたんだと思っていたが、どうやら言語によっては違うようだ。


この文化を理解した上での面識のない人達との会話は、何故かとても深いつながりができたように思える。たわいのない会話のなかにも、「オレにはわかっているよ」というような雰囲気を滲ませる言葉使いのオヤジさんだった。僕はそれから数回このオヤジさんの家に立ち寄ることになったが、写真を撮らせてもらったお礼に、僕がアリガトウと言葉を投げかけても何の言葉も帰ってこない。そんな言葉は必要なかったようだ。












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by hideoku0413 | 2013-06-05 01:16 | アボリジニの町Wadeye