うなだれる母親 <西アフリカ ベナン>
毎週休みになると行くバスケットのコート。
その敷地脇に住む家族を訪れた若い母子がいた。
たまに見かけるが、いつも皆と一緒に食事をしているので恐らく従妹だろうか。
この日、母親である彼女は暗い面持ちで静かに一点を見つめていた。
気になって近づいてみると、赤ん坊がとても衰弱しているようだった。
話を聞くとマラリアで熱があるという。股にはヒドい汗疹のような発疹も出ていた。
病院に行ったそうだがお金がなくて治療を受けられず、途方に暮れて帰ってきたところだった。
いくら必要なんだと聞くと、30,000CFA(西アフリカ通貨フランクセーファー、日本円で約6,000円)だという。
医療保険や社会保障のほとんど整っていないこの国で、緊急の際にはいかに資金の蓄えがあるかが肝要だ。
こんな小さな町で数少ない外国人である僕が現地の人に比べて多少お金があるのはわかっていると思うが、全くお金をせびる様子は無かった。また周りの家族も何とかしてやろうという気配も感じられなかった。恐らくそこら中でこのような状況があって、赤ん坊の死亡率も高いに違いない。
僕が一度宿舎に帰ってお金を持ってきたことに驚いたようだった。
この金は赤ん坊のために、と僕が念を押すと彼女は静かに僕を真正面を見据えてうなずいた。
その2週間後の日曜日、彼女がまた赤ん坊を連れてやってきた。
明るい顔で入ってきた途端すぐに赤ん坊の様子を察することができた。バスケをしている僕らの中に入ってきて感謝してくるくらいに。
by hideoku0413
| 2018-03-02 06:32
| 西アフリカ ベナン